2017.9.10
無料でDTM環境を作って試すにもいろんなやり方がありますが、やはり機能的な制限を感じることなく快適に作業するには、PCでDAWを使うのが一番です。Studio One Primeはその中でも有名な一つですが、説明書に書かれているような基本操作ではなく、曲を作る人間から見て実際の使い勝手はどうなのか、気になる方も多いと思います。そこで、実際にデモ曲を作りながら検証してみました。
公式ページのバージョン比較表には機能がずらっと並んでいますが、他のDAWの廉価版を考えて要点を取り出してみます。
・トラック数、使用時間に制限なし
・オーディオファイルの書き出しや読み込みも高い水準
・動作が軽い
まず、廉価版や何らかのハードに付属しているお試し版のDAWは、使用できるトラック数や時間に制限があることがほとんどですが、Studio One Primeにはその手の制限が一切ありません。
起動しているトラック数や登録した日にちを気にせずに使えるのは、制作に慣れているかどうかに関係なく大きなメリットです。
オーディオファイルの書き出しも優秀でWAVは32bitまで出力でき、比較表ではできないように見えますが、なぜかFLACやOggVorbisでの書き出しも行えました。(執筆時点で確認済、何らかのバグか修正が入る可能性もなくはないです)
他のDAWと比べても容量や動作が軽いので、マシンパワーの確保が難しいノートPCでも使いやすく、ハードの負担を低くできるのも長所です。
・VST、AUといった外部プラグインの導入は不可
・上位版で外部プラグインを導入できる環境を整えようとするとあまり安くならない
入門用としてはほとんど隙のないDAWと言ってもいいのですが、Studio One Primeは外部プラグインへの対応が明らかに消極的なのが欠点です。基本的にStudio One側が提供するものの中で完結させるスタイルをとっているので、次々出てくる新しい音源の無料お試しプラグインを使ってみたいという方には向いていません。
ミドル版であるStudio One Artistはインターフェースのバンドルなどもあるので比較的安く入手できますが、外部プラグイン導入は別売のアドオンを買わなければ使えません。最上位版のProは高価な一部の音源やエフェクト以外最初から使える状態になってますが、ここまでくると結構な額になるので、他のDAWも考えた上で決める候補となります。
しかし、外部の有料プラグインを導入したプロに劣らない環境はどの道それなりのお金がかかるので、Studio Oneが自分に合うかどうかになっていきます。
使ってみて実感したのは、画面最大化で違和感なく直観的に使えるようインターフェースが整えられているという点です。筆者は普段Cubaseを使っていますが、プラグインのインターフェースからミキサーといったところまで、起動すれば各々のウィンドウがいくらでも出てくる仕様になっています。
それらの配置やサイズは自由にできるのですが、その分曲を作るたびに別々になってまとまりにくく、無駄になっているスペースがあったり解像度を確保しないと操作しにくいシーンがいくらかあります。
その点Studio Oneは最初から表示の位置関係は決められており、枠を好みで調整する形となっていて、記譜の編集、フェーダーやエフェクトのミックス、音源選択のブラウズの表示切替がバーの右下にまとめられています。
一度使いやすいサイズを決めてしまえば、この切り替えだけでそれぞれの作業に瞬時に移行できるので、余分なことを考えずに制作に集中できます。こういったまとめられたデザインは携帯したノートPCでのDTMなど、大きなモニターや複数のモニターを用意できない場合において威力を発揮します。
小さいモニターでも使いやすいというのは、スピーカーやMIDIキーボード、オーディオインターフェースやマイクスタンドなどといった周辺機器でごちゃごちゃしやすいDTMでは大きな利点といえるでしょう。表示 → ウィンドウ でエディターやコンソールを独立させることもできるので、Cubaseや他DAWと同じ形にすることもできます。
トラックやオーディオの扱いが優秀な分、外部プラグインの導入が有料でしかできない以上、初期で使える音源やエフェクトがどこまでやれるかが一番気になるところだと思います。
音源のPresenceは簡易なエフェクトを搭載した総合系音源で、軽量ながら音作りを一通りこなせる機能をもっているので、シンセ弄りの勉強をしたい人にも向いています。オシレーター2基とエンベロープ2つは視覚的に調整できるようになっていて親切ですが、素の音は予算の都合もあるのか割と荒く、音色のプリセットによってカットオフのフィルターが妙にきつく絞られることがあるので、音が鳴らないと思った時は確認してみてください。
生楽器系統の音はそのままではぶつ切りになりますし、ベロシティ(弾く強さ)が強めだとかなり痛く歪んだ音なので、付属のリバーブをオンにし、エンベロープのリリースを調整しながら使いましょう。
無料なのでさすがに有料の音色の良さには敵いませんが、揃えてある幅はかなり広いので、やりたいジャンルに使う音が一切ないということはないと思います。エフェクトはリバーブ、ビートディレイ、アンプとディストーション、コーラス、フランジャー、フェイザー、4バンドEQとコンプレッサーとエキスパンダーを合わせたチャンネルストリップ、チューナーの9つです。
チューナーは他とは違う立ち位置なので実質的には8つで、基礎的なものが揃っているものの、良くも悪くも大味なエフェクトのかかり方がします。普段から質の高いエフェクトを使っている方には少々不満が残るかもしれませんが、DTMでどういう風にエフェクトをかけていけばいいのか、基本を知るには適しているでしょう。いい加減な設定だと簡単に音が酷くなったり割れてしまうので調整は慎重に行うべき、というのを実感できると思います。
実際にStudio One Primeのみで作り、SoundEngine(フリーソフト)で音圧だけ上げて完成させた曲がこちらになります。
後編ではそれぞれのパートでどういう音源やエフェクトの使い方をしたのかを解説します。
今日は以上です。
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よっしー(田中義一)
1985年千葉生まれ。バーストのブログを書いている人。デザインも少々。これまで1,000を超えるバンドにデザインを提供してきました。基本サッカー見ながらパソコンいじってる。外出時はパソコンいじれなくてソワソワして落ち着かない。
性格⇒ポジティブだけど打たれ弱い。超リアリスト。
好きなもの⇒ハンバーガー、サッカー観戦、熱帯魚