2017.7.31
フレットレス・ベースとは、通常のベースの指板からフレットを取り除いた楽器を指します。フレッテド(フレットが打たれた通常のベースギター)と比べて、正確な音程が取りづらいというデメリットはありますが、フレットによって音色が均一化されるようなことがないため、音色がやわらかく、また細かなニュアンスの表現がしやすくなるという大きなメリットがあります。
構造上アタック音が目立たないという特徴があり、バラード調の楽曲に使用されることが多かったのですが、そのやわらかな音色を逆手にとってハードコアやデスメタルなどの激しい曲調の音楽に取り入れられることも少なくありません。
半音ごとに音程が固定されてしまうフレッテドと違い、無段階で音程を発音することができるため、スライド奏法やヴィブラート奏法による表現力の多彩さもフレットレス・ベースの大きな魅力のひとつです。
また、ハーモニクスを鳴らした直後に押弦しスライドさせることでハーモニクス音をスライドさせる「スライド・ハーモニクス」という、フレッテドでは演奏できないフレットレスならではのテクニックも存在しています。
今回は、そんな魅力あふれるフレットレス・ベースを自在に操る凄腕ベーシストを5人、みなさんにご紹介していきます。
ミック・カーン(1958-2011)は、イギリスのニュー・ウェイヴバンドJapan(ジャパン)のベーシストとしてデビューしました。彼の個性的なベース・プレイはDavid Sylvian(デヴィッド・シルヴィアン)の創り出す楽曲に妖しい色気を多分に添えて、Japanの音楽性を独自のものへと昇華させています。
Japanの解散後は、ソロやセッションミュージシャンとして精力的に活動しており、ロックバンド一風堂の土屋昌巳や坂本龍一など日本のミュージシャンと深い親交を持っていたことでも知られています。
中でも、イギリスのニュー・ウェイヴバンドBauhausの元ヴォーカリストであるPeter Murphy(ピーター・マーフィー)と結成したDalis Car(ダリズ・カー)で見られるベース・プレイは、彼のキャリアの頂点ともいえる凄まじい個性を誇っています。
諸田コウ(1963-1999)は、 ハードコアバンドZadkiel(ザドキエル)のベーシストとしてデビューしました。
Zadkielの解散後に結成したプログレッシヴ/スラッシュ・メタルバンドDoomで一躍有名となり、ソロやセッションミュージシャンとして様々なミュージシャンのレコーディングに参加しています。
Zadklielでは、Motörhead(モーターヘッド)やVenom(ヴェノム)に影響を受けた泥臭いハードコアをプレイしていましたが、Doom以降になると彼の音楽的ルーツであるジャズやフュージョンからの影響が色濃くなり、ソロアルバムに至っては、もはやジャズ一色といえる出来です。
Doomは彼の死後も活動を続けており、スラッシュ・メタルバンドShell Shock(シェル・ショック)の千葉政己(Die Hard)を経て、現在では元Casbah(カスバ)の古谷崇敏が彼の後任を務めています。
スティーヴ・ディジョルジオ(1967-)は、スラッシュ・メタルバンドSadus(セイダス)のベーシストとしてデビューしました。
その卓越したテクニックはメタル界において高く評価され、Death(デス)、Testament(テスタメント)、Obituary(オビチュアリー)、Control Denied(コントロール・ディナイド)、Obscura(オブスキュラ)など、様々なバンドに参加してはその剛腕を揮っています。
5弦ベースを自在に操るその姿は、スラッシュ/デス・メタルにテクニカルな気風を持ち込み、エクストリーム・メタルシーンに多大な影響を与えました。
レス・クレイプール(1963-)は、プログレッシヴ/スラッシュ・メタルバンドBlind Illusion(ブラインド・イリュージョン)のベーシストとしてデビューしました。
現在でこそ変態ベーシストの代名詞とされている彼ですが、デビュー当時はそこまで変態的なプレイヤーというわけではありませんでした。
しかし、彼のキャリアを代表するバンドPrimusを結成してからは生来の(?)変態性が開花し、6弦ベースで難解なスラップを連発するという個性的なスタイルを確立するに至りました。
2016年にはJohn Lennon(ジョン・レノン)の次男でミュージシャンのSean Lennon(ショーン・レノン)と共にThe Claypool Lennon Deliriumというバンドを結成し、その変態っぷりを遺憾なく発揮しています。
ショーン・マローンは、セッションミュージシャンとしてデビューした後、プログレッシヴ/デスメタルバンドCynic(シニック)のベーシストとして一躍有名となりました。
彼の浮遊感溢れるベースプレイはCynicの音楽性を方向づけると共に、後続のプログレッシヴ・メタルシーンに多大な影響を与えています。フレットレス・ベースの他に、チャップマン・スティックの奏者としても広く知られています。
その正確無比な演奏力と柔らかな音色はもはや個性的ですらあり、シーンきっての巧者といっても過言ではないでしょう。
ショーン・マローンの正確無比なプレイも素晴らしいですが、個人的にはミック・カーンの不安定なプレイにこそ、フレットレス・ベースの魅力が詰まっているように感じます。
みなさんはどのように思われたでしょうか。
今日は以上です。
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よっしー(田中義一)
1985年千葉生まれ。バーストのブログを書いている人。デザインも少々。これまで1,000を超えるバンドにデザインを提供してきました。基本サッカー見ながらパソコンいじってる。外出時はパソコンいじれなくてソワソワして落ち着かない。
性格⇒ポジティブだけど打たれ弱い。超リアリスト。
好きなもの⇒ハンバーガー、サッカー観戦、熱帯魚