2017.7.2
音楽のジャンルや曲を作るチームの体制は様々なものが存在していて、使われるエフェクトなども多種多様です。しかし、どんな場合においてもまず無視できないエフェクト、要素として「リバーブ」が挙げられます。
バンドを組んでそれぞれの演奏を録音してまとめる、複数のソフト音源を駆使して作曲するなど、あらゆる状況で「音の空間を整える」という作業の必要性を感じる方は少なくないでしょう。今回はリバーブに焦点を当てて、手順を解説していきます。
まず、事前にチェックしておくことがあります。
曲製作に録音したトラックを使う場合、極力防音された環境で音割れや反射音がないように録ることが基本となります。スタジオの録音ブースに吸音材や変形板が貼り巡らされているのはこのためですが、行く機会がある方は天井の高さや遮音性能のD値を確認してみてください。
建築設計の段階で空気の層を作り振動を防いでいる優秀なスタジオはその分大抵予算も高くつくので、自分の規模に合ったところを選びましょう。
音がこもったり他の音がかなり入ってきたりして合わせる時にネックになることが多いのであまりお勧めできません。外から一番音の入らない場所と時間帯に絞り、気になる場合はカーテンを分厚くかけるなどして対策すると、家の中でもそれなりの収録環境を作ることができます。
音が鳴る家電や空調なども事前に切っておきますが、それでも収録に使う電子機器特有のヒスノイズやホワイトノイズと呼ばれる「サー」となる中~高音のノイズは多少混入してしまいます。これらはDAWにプラグインがあれば除去できますが、なくてもAudacityやSoundEngineといった無料で使える音声編集ソフトでも除去することができます。
トラックとして扱う前に先にやっておいて、ドライな音にしておきましょう。また、リバーブを挟む位置についても確認しておきます。
大抵の場合、音作り系エフェクト(アンプ、ディレイ、ディストーションなど)→リバーブ→マスタリング目的のエフェクト(コンプレッサーやマキシマイザーといった音量調節系)の順番にするとまとめやすくなります。
音作り系のエフェクトを後に回すと、リバーブの特徴である残響や質感まで上書きされて変わってしまうので、まとまりが失われがちです。
また、マスタリング目的の音量系エフェクトで調整した後にリバーブを使うと、増幅した音でクリップを起こしたり、音の体感密度が失われて調整を何回も前後したりする羽目になったりするので、手前でかけておくと作業を効率的に進められるでしょう。
意図的に順番を変えて使う場合は別ですが、明確な目的がない限りはこの順を守ったほうがリバーブの性質をスムーズに活かせると思います。
リバーブはアルゴリズムリバーブとコンボリュージョンリバーブ(インパルスレスポンス、IRとも)の2種類に大別されます。
アルゴリズムは機械的に綺麗に伸ばすタイプのリバーブで、コンボリュージョンは空間の反響を再現してかけるリアルさ重視のリバーブです。
アルゴリズムは音源そのものに、コンボリュージョンはDAWの付属エフェクトとして大抵ついてきますが、どちらかわからない場合は限界までかけて音を聴いてみましょう。
機械的に伸びて正確に減衰し続けるのがアルゴリズムで、ざらついてぼやけて音自体わかりにくくなるのがコンボリュージョンです。
音源で調整できるADSRエンベロープのR、Releaseも、ほとんどはアルゴリズムリバーブに近い効果になっています。
これらを使い分けるには、音楽のジャンルと音のなっている場所をイメージすると方向性を決めやすくなります。
たとえば、室内で行ったバンド演奏の録音をまとめつつ質感を豪華にしたいといった目的の場合、録音以外の打ち込みトラックに少しだけルーム系のコンボリュージョンをかけて馴染ませ、その後に共通設定のアルゴリズムを個別調整しながらかけていくという順序が考えられます。
こうすると、音を違和感なくまとめつつ、各トラックに合った表現を掘り下げることができます。バラードやゆっくりめのポップスだと深いリバーブが付き物なので、ここぞという時に使うお気に入りのリバーブを先に探しておくのも手ですね。最後の段で同じリバーブを同じ設定で使い回すと、曲としてのまとまりがよくなります。
リバーブを重ね掛けする時は、利きを5%~20%程度に低くしても十分成立するので、かけすぎに気をつけましょう。そこから更に位置関係を微調整するには、パン、イコライザー、コンプレッサーなどが効果的です。
パンはステレオ感の調整というわかりやすい項目ですが、ドラムの低音やベースなどは曲全体を支える根本となることが多いので、中央が無難なポジションとなります。音は遠くになるほど低音と高音が分散して届きにくくなるものなので、イコライザーで同じように低音と高音を少しずつ削ると、心理的に音を遠めにすることができます。リバーブの中には周波数帯でかかり方を調整できるものもあるので、この理屈を組み合わせるとより効果的です。
コンプレッサーは、スレッショルドの音量を超えた時の音をレシオの比で圧縮しつつ、音量全体を底上げするものなので、音を前に出したい時に控えめにかけてあげるといいでしょう。
イコライザーは周波数のエフェクトなので俗に横のアプローチ、コンプレッサーは音量のエフェクトなので縦のアプローチと呼ばれますが、どちらも効果は高いので、音場を調整する時にリバーブと一緒に使っていくと目的の音に近づけやすくなります。
簡単な例を用意してみました。
雑多な環境を想定して、エレキギターはIKのSampletank3から、ベースはKontaktのFactorySelectionから、ドラムセットはSteinbergのHALionSonicSEから、アコースティックギターはAIRMusicTechnologyのXpand!2からとバラバラな選択で作成しています。
0秒からの1回目の演奏はクオンタイズとベロシティ調整しかしていないものです。初期状態なので全ての音が前の中央という同じ位置にあり、ドラムの音の尖りが目立っていたり、デジタルっぽいつるつるした音の印象が残っています。
16秒からの2回目の演奏は各音源のリバーブを切り、挙げた例と同じ考え方、手順でコンボリュージョン、アルゴリズムをかけて調整したものです。
出すぎた音がリバーブとイコライザーの調整で柔らかくなり、同じ場所で鳴っている感じを保ちつつ場所が分かれていて、いくらかなめらかでキツさのない空間が出来上がったかと思います。
リバーブの世界はかなり奥が深く、今も専用の外部エフェクターを愛用しているプロが少なくありません。
かける手順、目的を整理しておくと、重ね掛けや使い分けも難しいものではなくなりますので、自分の曲に合ったリバーブの調整をどんどん試して感覚を掴んでいきましょう。
以上です。
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よっしー(田中義一)
1985年千葉生まれ。バーストのブログを書いている人。デザインも少々。これまで1,000を超えるバンドにデザインを提供してきました。基本サッカー見ながらパソコンいじってる。外出時はパソコンいじれなくてソワソワして落ち着かない。
性格⇒ポジティブだけど打たれ弱い。超リアリスト。
好きなもの⇒ハンバーガー、サッカー観戦、熱帯魚