2017.7.13
バンドサウンドにおいて「アコースティックギターの音(以下アコギ)」が欲しくなるシチュエーションがあるかと思います。ギタリストはもちろん、ボーカルの方もアコギを鳴らすことって多いかと思いますが、特にライブの場でのアコギの使い方って結構難しいものです。PAの立場も踏まえて、アコギの音について詳しく掘り下げたいと思います。
まず、バンドでアコギを使うには、生ドラム並みの「音量」を稼がなければなりません。音を増幅させる必要がありますが、選択肢が何種類かあるかと思います。アンプを通す・ラインやダイレクトボックスを通してスピーカーから出す・マイクを立てるなどが挙げられるかと思います。
ギター側のスペックにもよりますが、電気的な回路を全く持たない生ギターや、エレアコとしてライン出力を持っているギターもあるためそれによって選択肢も変わってきます。
エレアコの中でも「マイクを搭載しているタイプ」「ピエゾピックアップのタイプ」「マグネットのピックアップを搭載しているタイプ」またそのいくつかのハイブリッド型、後付けされているギターなどと様々な種類が存在しています。
自分のギターがどのタイプであるか、で「出力」「音づくり」など変わってきますので、その特徴をつかむことは重要になってきます。
電気的出力を持たない生ギターの場合、マイクを立てるか、後付けのピックアップを準備するのが大前提となります。ピックアップに関しては後ほど解説するとして、マイクを立てる場合の話です。
マイクを立てる位置、マイキングは様々なパターンがあります。「ギターのどこを狙うか(マイクの先をどこに向けるか)」「どのくらいの距離をとるか」「角度をどうするか」、さらに会場や周辺の音響特性、マイク自体の特性などを考えて位置を決めます。
スタジオなどで実験すると、非常に勉強になりますのでぜひやってみて欲しいのですが、マイクを、
●サウンドホールに向けて立てる
●ブリッジに向けて立てる
●12フレットあたりに向けて立てる
3パターン試してみるだけで、音の変化を実感できるはずです。
それに加えて「マイクを近づけてみる・離してみる」「マイクの角度を変えてみる」などの変化を与えてみるのも面白いです。その場の環境や狙った音に応じてPAはマイクを狙って設置しています。演奏者自体が動いたりすると致命傷となったりもしますのでご注意を。
ピックアップを持っている場合は、基本的にラインを通します。エレクトリックと同じように、ピックアップで拾った音(信号)を電気的に増幅させて音を出すのですが、信号自体の音質は固定です。
増幅させるには
●ダイレクトボックス(DI)、もしくはミキサーのラインインへの入力→音響システムでの増幅
●アンプを使った増幅→アンプに対してマイキング
上の二つが考えられますが、アンプを使わない方が圧倒的に多いかと思います。ラインで音をとってしまった方が、アコギの音のコントロールがしやすく全体のアンサンブルに対してちょうど良いところに収めやすいのです。
機種によっては、手元でイコライジング出来るものもあります。ですがスピーカーから出る音の、音質のコントロールはPA(ミキサー)の手によるところが大きいため、好みの音質に近づけたい時はPAとのコミュニケーションが必要になります。
ここまでの流れでお気づきかとは思いますが、アコギの音質をコントロールするには、PAの力が大きく関わってきます。そのため演奏者の好みが確実に出せるかというと、そうではありません。
よく「もっとローを出してほしい」という要望を頂きます。もちろん環境などによって出せる場合もありますが、アコギはロー帯域が非常によくハウリングを起こします。気持ちはわかるけど機材や環境によってもう出せない、と苦渋の決断を強いられることもたくさんありますので、演奏される際は「限界もある」といった事を覚えておいていただけると幸いです。
エレアコにはラインのアウトプット(ジャック)が付いていて、そこからアウトプットします。また、ジャックの前にはプリアンプが付いていたり、イコライジングが出来たりと多様な仕様がありますが、お勧めするのは「ジャックの後ろに“グラフィックイコライザー”をかませる」です。
グラフィックイコライザーは、特定周波数をブースト/カットをするエフェクターです。名前の通りイコライジングするエフェクターですね。
イコライジング出来るエレアコの多くは「ロー」「ミッド」「ハイ」と大雑把に分かれた周波数帯域を「まとめて・ごっそり」ブーストしたり、カットしたりしています。つまり、カットしたい周波数だけではなく、近い周波数もまとめていじってしまうのです。
グラフィックイコライザーは、コントロールできる帯域が細かく分かれており、「ロー」のなかでも「125hz」だけをカット、といった使い方ができます。
本体のイコライザーはすべて“0(フラット)”にしてしまい、特定の周波数をピンポイントでコントロールすることは、より「アコースティックな音」を狙うためにも良い手ではないでしょうか?
アコギの音は、上手くアンサンブル出来ると非常に良い味を出してくれますよね。手持ちのアコギが、周波数単位で見た際にどこが「良く鳴る(削りたい)」「足りない(足したい)」といった事を意識することも、良いアンサンブルに近づく一歩です。
どうしてもライブなどではPA任せになってしまうところではありますが、研究してみる価値は大いにありますので、ぜひやってみて下さい。
以上です。
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よっしー(田中義一)
1985年千葉生まれ。バーストのブログを書いている人。デザインも少々。これまで1,000を超えるバンドにデザインを提供してきました。基本サッカー見ながらパソコンいじってる。外出時はパソコンいじれなくてソワソワして落ち着かない。
性格⇒ポジティブだけど打たれ弱い。超リアリスト。
好きなもの⇒ハンバーガー、サッカー観戦、熱帯魚